加納欄の誘拐 シリーズ21
自分に美学を求めてるなら、あんなやり方はしないと思うけど。


……松田課長に怨みのある人?


……南署自体に、怨みがある人?


「おおい、持って来たぞ」

と、言って、吉井さんが、黒いファイルの束をドサッと机に落とした。

「課長が、ここにきてからの資料だ」

「マジですか?」


これ、全部見るの?


「高遠達に比べれば、ないだろぉ?」

吉井さんは、高遠先輩と、大山先輩を冷ややかに見た。

「吉井さん、そりゃないぜ。その分、検挙してんだからさぁ」

と、言いながら、大山先輩は、ひとつのファイルを手にとって、怪しい人物がいないか、確認をはじめた。

あたしもファイルを見たけど、南署に来た時には、もう、課長の肩書きがあったから、そんなに、怨まれるような事件には、首突っ込んでないんだよねぇ。

「高遠、声紋わかるかもしれないぞ」

鮎川さんが、走って戻ってきた。

あたし達の手が、一斉に止まり、鮎川さんに集中した。

「素人だな」

「え?」

「衛星通信して撹乱させてるのかと思ってたけど、多人数の声とボイスチェンジャーや雑音が混ざってるだけだ。そんなに時間かからないな」


お〜w(゚o゚)w


さすが、鮎川さん。


感心してるところに、電話が鳴った。


犯人?!


「南署」

高遠先輩が、すかさず電話に出る。

「私、祥子」

電話の相手は、祥子さんだった。

「どうだ?」

「さっき、課長の家にも、犯人から連絡があって、1億の身代金を請求されたらしいわ。ちょうど、南署に連絡入れようと、してたところだったみたい。課長は、朝、定刻通りに、家を出たみたい。特に、何の異常も感じなかったそうよ」

「そうか、祥子、そこで待機してろ。捜査員派遣させる」

「了解」

そう言って、高遠先輩は、電話を切った。

「合わせて、2億かよ。ふざけやがって!」

大山先輩が、舌打ちをした。

30分後に、犯人からまた連絡がきた。

「オ金用意デキタ?」

「いや、まだだ」


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