ラブ☆ファイト
「どうした、西遠寺?」
険のある声。
皮肉にも順調な流れを止めたのは、その進行役の声だった。
告げられた名の主の方をいち早く振り向いた私は、怪訝な表情に出くわす。
その他大勢が振り向いた時にはすかした顔に戻っていたけれど。
先刻からの百面相が司会者の癇に障ったのかしら?
それとも……。
「すみません。
今の言葉、聞き取れなかったのでもう一度言っていただけますか?」
言の葉と共に西遠寺が浮かべたのは取り繕うような笑顔。
それを見てやはりと納得した。
ホームルームの時にも感じたことだが、西遠寺は重い責任のある役職につくのを忌避する節がある。
にも関わらず、奴は私のパートナーに指名されてしまった。
それで奴は不快感を顕わにし、その顔を司会者が見てしまったというわけだ。
奴が司会者に言葉を繰り返すように言ったのは、自分の聞き間違いかもしれないというほんの僅かな可能性に縋りついているだけ。
浅はかな願望だわ。
「だからお前と高宮さんを1学年代表にすると言ったんだ。
よく聞いとけ、1年坊主。
ったく、こんなのが学年代表で大丈夫なのか……」
そんなもの、こうしてすぐに打ち砕かれてしまうというのに。
「……ハッ?」
笑みの消えた西遠寺を冷めた目で見つめた。