見えないお姫さま
再び中庭に来ると、日は微かに落ち始めていた。
外は少し寒い。
中庭を奥へ進むと昼間の花壇に彼の姿を見つけた。
この肌寒い中、彼は汗を流して新しい花を植えている。
やはり私は、その汗が美しく見える。
どうしよう。
さっきと違って今私は、魔法にかかっている事を分かっている。
簡単には声をかけられない。
取り敢えず、彼がしゃがんで何をしているか気になる。
なので後ろから覗いてみよう。
ヴァンの丁度真後ろに立つと、彼がいきなり立ち上がった。
「キャッ!」
驚いた私は後ろに尻餅を着いた。
「え?うわっ!」
振り返ったヴァンは、私の足に躓いて転んだ。
………。
顔が1センチの距離にある。
その距離でヴァンが喋った。
「アイリ様……?」
息がかかる。