見えないお姫さま



再び中庭に来ると、日は微かに落ち始めていた。

外は少し寒い。


中庭を奥へ進むと昼間の花壇に彼の姿を見つけた。

この肌寒い中、彼は汗を流して新しい花を植えている。


やはり私は、その汗が美しく見える。



どうしよう。

さっきと違って今私は、魔法にかかっている事を分かっている。

簡単には声をかけられない。


取り敢えず、彼がしゃがんで何をしているか気になる。

なので後ろから覗いてみよう。


ヴァンの丁度真後ろに立つと、彼がいきなり立ち上がった。

「キャッ!」

驚いた私は後ろに尻餅を着いた。


「え?うわっ!」

振り返ったヴァンは、私の足に躓いて転んだ。


………。

顔が1センチの距離にある。

その距離でヴァンが喋った。

「アイリ様……?」

息がかかる。






< 22 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop