見えないお姫さま



「そんなに笑うと───」

そう言ってヴァンの手が伸びてくる。


え?


「こうですよ!」

ヴァンは見事にその手で私の口を塞いだ。

私は笑うどころか息まで止めてしまった。


み、見えてないのに何故口の場所がわかるの!?


ていうか、口!

口を男性に触られてる!



「声で場所は分かるんですよ!…ってあれ?ア、アイリ様?」

急に静かになった私を変に思ったのか、ヴァンが様子を伺うように名前を呼ぶ。

だけど私はヴァンの手に意識が集中していてそれどころではなかった。



い、息出来ない!

今息したらヴァンの手に鼻息がかかってしまう!


「アイリ様?」

そんな私に気付かないヴァンは相変わらず私の口を塞いだまま。


苦しい!

もう無理!


私はヴァンの手を掴んで、口から離した。


「ぷはぁっ!!」

やっと自由になった口で私は大きく息を吸い込んだ。


「え?」





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