見えないお姫さま



いやいや、駄目よアイリ。

禁断は駄目。


昨日、恋してもいい相手くらいわかっているって怒ったばかりじゃない。

庭師に恋をしては駄目よ。


………でも、話し相手になってあげるくらいいいわよね?


「私で良ければ毎日来てあげるわよ?」

「え!?いいんですか?……いや駄目ですよ。そんな迷惑かけられない」

「迷惑じゃないわよ。私も貴方と話しているの楽しいもの。私あんなに大声で笑ったの久しぶりよ?」

「い、いいんですか?」


私はヴァンの手を取り、小指どおしを結んだ。

それをヴァンは見つめる。


「何したかわかる?」

「……指切り?」

「そう。私毎日来る。だからその約束よ」

「約束…」

ヴァンは小指を見つめて微笑んだ。

これは花に向けられたものじゃない。

私に向けられた笑顔よね。

ヴァンの笑顔に私の顔も緩む。





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