見えないお姫さま
「いいわよ」
「え?」
「だから敬語!そんなこと気にしない」
「えっ本当ですか!?」
「えぇ。“友達”、なんでしょ?」
“友達”と呼べる存在は私にもいない。
だから妙に“友達”という響きが嬉しかった。
「はい!」
「“はい”?」
「あっ違った。“うん”!」
嬉しそうに答えるヴァンを見ていると、私の笑顔も絶えない。
……そうじゃないか。
私も嬉しいんだ。
ヴァンとの距離が縮んでいくのがわかるから嬉しいんだ。
「ヴァン?」
「ん?」
「んー。なんでもない」
「は?なにそれ」
何でもいいから何か話したかった。
敬語じゃないヴァンの話し方が聞きたかった。
でも何も浮かばなかった。
見切り発車で名前を呼んだのはいいけど、話すことがこれといってなかった。
そんな私にヴァンは苦笑いを浮かべる。
まぁいい。
そんなことも楽しい。