見えないお姫さま
「ど、どうされたんですか!?こんな所に」
そう言いながらも、慌てた素振りで再び作業を始める。
何なのかしら、この態度。
質問しておきながら、私が答える前に顔を背けるとはどういう事?
まあ、いいわ。
「それは今何をしているの?」
どうしたと聞かれても用があって来た訳ではないので、彼の質問をさらりと流した。
そしていかにも怪しい態度には敢えて触れなかった。
きっと王族とは緊張して目も合わせていられない、そんなところじゃないかしら。
そんな態度には慣れているもの。
「ここの花壇に新しく花を植えようと思っているので、土作りの為に肥料を撒いているところです」
彼の顔には笑顔が戻り、さっきと違い流暢に話す様は誰が見たって花が好きな事が分かる。
「お花が好きなのね」
「はい!」
笑顔でそう答えた彼に私の心臓はキュッと締め付けられた。
しかしそのキラキラした笑顔は花壇に向けられたもの。
そう思うと何故か気持ちが沈んだ。