tokimeki*train
「大丈夫? 顔色悪いよ。気持ち悪いの?」
見た目は、いかついクマさんのような男の子だったけど、言葉は優しかった。
「大丈夫。助けてくれて、どうもありがとう」
「それなら良かった」
「あの。名前を教えてくれませんか?」
「え?」 と戸惑いを見せる彼。
「お礼がしたくて」
私は小さい頃から、
『助けて貰った人には必ずお礼をしなさい』とおばあちゃんに何度も言われながら育って来た。
だから私は当たり前の申し出をしてるつもり。
でも彼は…
「お礼? いいよ。いらないよ。大した事してないからね」と笑って言った。
「でも…」
私が困ってるのが伝わったのかな? 彼が…
「う~ん。分かった。じゃ!お礼は今度また会った時でいいよ」
「君、いつも帰りもオレと同じ電車に乗ってるから」
「え? 同じ電車?」
「そっ。やっぱ気付いてなかったか。いつも君は同じ所を見てるもんね」
イタズラ小僧のような笑みを浮かべた彼だった。