同級生
駅に着いた後、財布を改札のセンサーに翳し、ホームに駆け込んだ。

息を切らせながらホームを見渡しても、長い黒髪は何処にも居ない。


大きくため息を吐いた後、ゆっくりと顔を上げると、反対側のホームに停まる電車の中に、俯いている長い黒髪の女を見つけ出した。


すぐそこに和華が居る。

すぐそこに和華が居るのに、和華は全く俺に気付かず、ずっと俯いていた。

反対側のホームに行こうとした瞬間、電車はゆっくりと走り出してしまった。



新しい連絡先も…

和華に近付く術も…

全てを無くした今…

和華の大切さにやっと気がついた。



全てが遅過ぎたんだ。


もっと早く和華の気持ちに気付いてれば…

もっと早く自分の気持ちに勇気を持っていれば…


こんな『卒業』をしなくて済んだのに…



涙を堪えながらため息を吐き、和華の居た場所からゆっくりと歩きはじめた。


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