同級生

偶然



葉月の誕生日の土曜。


本来なら休日だけど、急遽仕事になった日。

朝早くから車に乗り込んだ後、かなりハードな肉体労働を終え、帰りの車に揺られていた。


時間は午後11時過ぎ。

東京に着くまで最低でも後3時間。

どう考えたって家に着くのは午前2時を過ぎてしまう。


その事を葉月にメールで知らせてからずっと、しつこ過ぎる位に携帯が震え続けている。

けど、携帯をポケットから出す気力は無いし、愚痴を聞き続ける体力すら残っていない。

何より、職場の先輩達が乗っている車の中で、どんな顔をしながら葉月の愚痴を聞いていたら良いかわからないから、わざと気付かない振りをし続けていた。


その事に気付いて居るのか、気付いて無いのか…

先輩の春樹さんも瞬さんも、震え続けている携帯の事を聞いて来ようとはしない。



………今日の現場ハードだったもんな。聞いて来る気力も無いか…。
…和華もグチグチ言うのかなぁ?和華はあっさりしてるから言わなさそうだな…



ふと頭の中に浮かんだ和華の記憶。

ふぅっと大きくため息を吐き、和華の記憶にしがみついた。


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