同級生

言われなくてもわかってた。


『可愛い』と言葉に出した瞬間、魔法にかかったように顔が熱くなるのがわかったから。


「はい。これ…。イタ電しないでね」

そう言いながら差し出された名刺。

受け取った名刺を眺めながら小さく告げた。

「サンキュ…」


変わらない特徴のある可愛らしい文字。

文字だけじゃなく、顔も声も俯く仕種も…


俺自身の気持ちも

あの頃と何も変わってない。

何も変わってなさすぎて、今の自分が高校の頃に戻ったように感じる。



「洋介!帰るぞ!」

春樹さんの声で我に返ると、和華がニッコリと笑いながら告げてきた。

「お疲れ様。またね」

「ああ。またな…」

和華は春樹さん達に会釈をし、軽く走りながらその場を離れた。


< 142 / 196 >

この作品をシェア

pagetop