同級生


「…自分で行く気無い?」

「来たついでだろ?コートだって着てるんだし…。早く呼んでやれよ。ったく…」


叔父さんの呆れるような口調にため息をつき、閉じかけた傘を開いた。


気分も足取りも凄く重い。

たった数メートルの距離なのに、何百メートルにも、何千メートルにも感じてしまう…


ゆっくり過ぎる程ゆっくりと、ワンボックスカーに近付くと、車内の状況がハッキリとわかった。


後部席で横になって居る人と、運転席と助手席のシートを限界まで倒し横になってる2人。

3人とも上着を上半身に掛け、眩しいのかタオルを顔に掛けている。

雨音が強すぎて私の足音に気付かないのか、3人とも横になったまま微動だにしない。



…浜野くんどれだろ?一番下っぽいから後部席かな?でも、一番下だから運転席も有り得るし…
よし!助手席は浜野くんじゃないとみた!



助手席の窓を少し強めに“コンコン”っとノックすると、助手席の男性は顔のタオルをスッとずらした。



………知らない人で良かった。



助手席で横になっていた男性が、助手席の窓を開けている最中、ホッと胸を撫で下ろしている自分。


< 162 / 196 >

この作品をシェア

pagetop