同級生

「お疲れ様です。どうしました?」

不思議そうな表情で聞いてくる少し髪の長い男性。

「あ、お疲れ様…!!」


ほんの少し声を出しただけなのに、後部席で横になっていた男性は“ガバッ”と勢い良く起き上がり、思わず体が“ビクッ”と飛び跳ねた。


「洋介!お嬢さん驚かせんじゃねぇ!ったく…。あ、すいません」

「いえ…。あ、叔父さんが『寒いから中で休んで下さい』って言ってましたので、もし宜しければ…」

「春樹さんどうします?」

「そうだな。しばらく止みそうにないし…。行くか」



………この天気じゃそうなるよね。



軽く会釈をした後、浜野くんと目を合わせないまま、小走りで事務所に戻った。


「来るって言ってたか?」

「…うん」

「なんだ?元気無いな?」

「…寒いの」


傘とコートを片付けている最中、叔父さんは普段通りに接してくる。

けど、正直そっとしておいて欲しかった。

今日一日で良いから、なるべく私に絡まないで欲しかったんだけど…

普段、誰も話を聞いてくれないと、テレビに向かって話してしまう位話好きな人。

この人にそんな事が通用する訳無いんだけど…

お腹がすいてる時だけは黙ってる変わり者。



………お願いだから余計な事言わないで!



浜野くん達が来るまでの間、心の中で何度も祈り続けた。


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