同級生

「失礼します」

そう言いながら、春樹さん、瞬さん、俺の順で事務所に入り、叔父さんに促された通り、来客用のソファに座った。

車の中より温かい室内と、固いシートなんか比べものにならない程、寝心地の良さそうなソファ。

この環境だけでも充分幸せを感じるのに、すぐそこに和華が居るなんて…



………やべぇ。俺まだ寝てんのかな?



眠気を覚ますようにタオルで顔を擦ろうとした時、芳しい香りが鼻を刺激した。


「宜しければどうぞ」

そう言いながらテーブルにコーヒーを並べる和華。


ほんの些細な事なのに…

同じような状況は何度も経験してるのに…

何故か“ジーン”と感動してしまった。


「そこにコーヒーメーカーあるんで、御自由におかわりしてくださいね」


ニッコリと微笑みながら告げる和華だけど…

微笑みの先に居るのは春樹さんだけで、奥に居る俺とは目を合わせようとしない。


さっきは瞬さんに笑いかけてたし、今は春樹さんに笑いかけてたけど…



………俺、まだ和華とまともに話してない…。来たばっかだから仕方ないか…



でも、なんか違う。

さっき驚かせた時だって、和華はすぐに視線を反らしたし、挨拶だってまだしてない。


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