同級生
そんな事は気にならないのか、気にしないのか…
和華は仕事に取り掛かってしまった。
シーンとした室内の中、和華の叩くキーボードの音と、アスファルトを叩く雨の音が聞こえるだけ。
無言のまま時間が経ち、雨音が弱まった頃、静寂を遮るように和華の叔父さんが口を開いた。
「腹減ったな…」
「食べてないの?」
「和華が遅いから食いそびれたんだよ」
「叔母さんは?あ、着付け教室か…」
「ああ。明日の展示会の打ち合わせが東京であるんだとさ。飯行ってくるな」
「いってらっしゃい…」
和華が小さく呟くように言うと、叔父さんはさっさと仕度を済ませ、春樹さんに声をかけた。
「ちょっと出るんで、何かあったら和華に言ってください」
余程空腹だったのか、春樹さんの返事を待たずに事務所を後にした叔父さん。
ふと和華の方に目を向けると、和華は『いつも通り』と言わんばかりに仕事を進めていた。
「瞬、行くぞ。洋介は体調良くなったら来い」
突然、耳を疑うような言葉を告げた春樹さん。
「え?体調?」
「調子悪いんだろ?無理するな」
「はぁ…」
「和華さん。すいませんが、洋介だけ休ませてやって下さい」
春樹さんはそう和華に告げると、二人は和華の返事を待たずに事務所を後にした。