同級生
シーンと静まり返った事務所には、和華と俺の二人きり。

和華は状況が掴めないのか、キョトンとした表情で扉を見つめていたけど、俺と目が合った途端、直ぐさま視線をパソコンに向け、キーボードに指を走らせた。



………絶対おかしいよな。気のせいか?



『話しかけるな』と言わんばかりにキーボードを叩く和華。

少しだけ気が引けるけど、思い切って話しかけた。


「あのさ…」

「あ!体調悪いならコーヒーじゃない方が良いよね。ちょっと待ってて」


意を決して話しかけたにも関わらず、事務所の奥にある仮住まいに消えてしまった和華。

半信半疑だった気持ちは、一瞬にして確信へと変わると同時に、小さな怒りすら込み上げてきた。


しばらくすると、和華はトレーにマグカップと薬の瓶を乗せ戻ってきたけど、無言のまま着々とテーブルにマグカップと薬を置いている。


甘い香りのするココアと、白い錠剤の入った瓶。

全ては和華の優しさだろうけど、その優しさですら腹立たしく思えてしまう。


「なあ」

「あ!薬飲むのに水いるね!」

「いらねぇよ」

荒い口調になったせいで、和華の表情は少し脅えてしまったが、視線はテーブルにおかれたまま。


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