同級生
臆病
『高校の時だって挨拶すらしなかった。あの頃と同じ』
ピーンと張り詰めた空気の中、拳を握り締めながら黙り込んでしまった浜野くん。
私があの言葉を告げてからどれくらい時間が経っただろう…
1分1秒がとてつもなく長く感じて、呼吸する事すら許されそうに無いように感じる。
永遠にも感じる程、長いの沈黙の後、浜野くんは小さな声で聞いてきた。
「…だから嘘ついたのか?」
「う…嘘?」
「猫なんだろ?昔から飼ってるの」
「―!!―……叔父さんから聞いたの?」
「ああ。…もう、嘘とかどうでもいいや」
浜野くんはため息交じりにそう言うと、冷めてしまったマグカップのココアをグイッと飲み干した。
「甘ぇ…」
「あ…甘いの嫌い?」
「いや、そんな事無いけどさ。薬はいいや。サンキュ」
浜野くんはため息交じりにそう言いながら立ち上がり、ドアの方に向かって行った。
ドアノブに手をかけ、少しだけ扉を開けると
「ごめん」
私の方を見ずに小さく言うと、浜野くんは雨の中へ消えてしまった。
あの頃と同じ行動…
修学旅行の時、エレベーターの中で二人きりになったのに、何も話せず、何も話さないままエレベーターから降りる間際に告げてきた、同じ言葉と同じ行動。