同級生

困惑

マンションに入っていく彼の背中を見つめながら、そっと人差し指で唇をなぞった。


さっき邪魔が入らなかったら…

さっき静電気が起きなかったら…

私の唇と彼の唇は……



………ダメだって!意識したらまた避けちゃうじゃん!…でもさ、『俺、あんなに…』ってなんだったんだろ?小説の事からかいたいからって、あんな告白みたいな事言うかな?



「和華?」

「は、はい!」

「お待たせ?」

シートベルトを締めながら平然と告げてくる彼の唇と、記憶の中には無い私服姿に、また顔が熱くなってしまった。

「ご、ごめんごめん!ありがと」

「何が?」

「あ、な、なんでもない!こっちの話だから!」

「こっち?」

「あ、あっちかも?」

「変な奴だな。あ、知ってる店、居酒屋だけど良いかな?」

「う、うん!」

必死で冷静になろうとしても、しどろもどろになるばかり。

それどころか、訳のわからない事まで言ってしまい、最終的には返事しか出来なくなってしまう始末。



………ダメだ。完全に動揺丸出し。ちょっと黙って冷静にならなきゃ…


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