同級生

「…ま、前にね、会社の先輩に教えて貰って、読んだんだけど…。ひ、酷い内容だったよね!」

「酷い?どこが?」

「ラストとか…、何でハッピーエンドにしなかったんだろうね!」


元気そうに振る舞う表情と、違和感を覚える乾いた笑い。

引き攣った表情のまま、和華が平然とする一つ一つの行動が、無理をしているようにも思えてしまう。


「和華?顔が引き攣ってるぞ?」

「…ちょっとね」

「言えよ。言わなきゃわかんねぇし、酒の席なんだから全部ぶっちゃけようぜ?な?」

俯いたまま黙り込んでしまった和華。


和華であって欲しい。

あの小説を書いたのは、目の前にいる和華であって欲しい。


『あの小説、私が書いたんだ』


その一言が聞きたくて仕方ない。

何より聞きたい言葉は一つだったんだけど…



「…変だよね。浜野くん、私の事、普通に下の名前で呼んでる…」

「え?」

「普通に和華って呼んでるじゃない?見ず知らずの人が書いた携帯小説なのに、影響されてるのかな?って…」

「見ず知らずの人?あれって和華が書いたんじゃねぇの?」

「忙しくてそんな暇無いよ。本業と手伝いと家事でいっぱいいっぱいだもん」


< 186 / 196 >

この作品をシェア

pagetop