同級生
「…ま、前にね、会社の先輩に教えて貰って、読んだんだけど…。ひ、酷い内容だったよね!」
「酷い?どこが?」
「ラストとか…、何でハッピーエンドにしなかったんだろうね!」
元気そうに振る舞う表情と、違和感を覚える乾いた笑い。
引き攣った表情のまま、和華が平然とする一つ一つの行動が、無理をしているようにも思えてしまう。
「和華?顔が引き攣ってるぞ?」
「…ちょっとね」
「言えよ。言わなきゃわかんねぇし、酒の席なんだから全部ぶっちゃけようぜ?な?」
俯いたまま黙り込んでしまった和華。
和華であって欲しい。
あの小説を書いたのは、目の前にいる和華であって欲しい。
『あの小説、私が書いたんだ』
その一言が聞きたくて仕方ない。
何より聞きたい言葉は一つだったんだけど…
「…変だよね。浜野くん、私の事、普通に下の名前で呼んでる…」
「え?」
「普通に和華って呼んでるじゃない?見ず知らずの人が書いた携帯小説なのに、影響されてるのかな?って…」
「見ず知らずの人?あれって和華が書いたんじゃねぇの?」
「忙しくてそんな暇無いよ。本業と手伝いと家事でいっぱいいっぱいだもん」