同級生
「どうしたの?」
私の声が届かないのか、問い掛けても微動だにしない。
「浜野くん?」
「“浜野くん”ってのやめろよ」
「え?」
「俺、高校の時から和華には“洋介”って呼んで欲しかった。でも、和華はずっと俺に顔を見せなかったろ?俺が近付くと今みたく俯いて…、目が合ってもすぐ顔を逸らして…」
「……ごめん」
「そんなに嫌いだったのか?俺の事」
「違うよ…」
「だったらちゃんと見ろよ。…俺ずっと『洋ちゃ~ん!お財布忘れたからお金貸して~!』
浜野くんの背後から突然聞こえた、おじさんの駆け寄る足音と甘えた声。
ずっと足元を見ていたせいで、おじさんが近くに居る事すら気付かなかったんだけど…
このタイミングで出て来られるのは、正直ウザ過ぎ。
せめてあと5分。
ううん。
あと3分で良いから、二人きりにさせて欲しかった。
もし、あと3分二人きりになれたら…
もしかしたら……