同級生
慌てて立ち上がり、俺を廊下に押し出す桜庭。

ポケットに手を入れながら壁に寄り掛かり、ため息混じりに聞いた。

「…何で止めるんだよ?」

「ヤバいって!ここ学校だろ?」

「関係ねぇよ。マジムカつく…」

「退学になったらどうすんだよ!?一生アイツに会えなくなるぞ!?」


桜庭の言葉に何も言い返せなかった。



アイツへの思いは日に日に強くなって行くけど、俺はアイツの事を何も知らない。

唯一、知っているのは出身中学と、俺と同じ学校に通う、『ただの同級生』って事だけ。

キャプテンと付き合っていた事も知らなかったし、アイツが大園と何処まで仲が良いのかもわからない。

ましてや、アイツが誰を思っているかなんて知る由も無いし、携帯の番号すら知らない。



胸の奥にハッキリと感じる痛みにため息を吐き、ゆっくりと歩き出した。

校舎の出入り口前にあるベンチに座り、ボーッと校舎の中を眺めた。



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