同級生
ハッキリと顔を見れたけど、声を聞いて無い。


顔もシルエットも合格だけど、酒焼けをしたような声だとしたら相当幻滅する。


声を聞かないまま、クラスの列に戻ってしまった小さな背中を眺め、小声で人志に聞いた。

「…アイツ何て名前?」

「ギャルが大久保藍子で、黒髪が……何だっけな…」

「そっちの方が肝心だろ?」

「何で?」

「…なんとなく」

「洋ちゃん、もしかしてさ…一目惚れしちゃった?」

「アホか…」

イラつきながらその場を離れ、自分のクラスの列に並んだ。



確かに、見た目は好きなのタイプと近いけど、問題は声と性格。

中学の時、少しだけ一哉と付き合っていた大人しそうな同級生は、彼氏が居るのにも関わらず、平気で他人の男にちょっかいを出す酷い女だった。

その話を聞いてから、『大人しそうな女は危険』って思い込んでるし、『工業高校に入る女なんて、ろくでも無い奴』だと思い込んでいるんだけど…



入学式の最中も、大人しそうな同級生が気になって仕方無い。

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