同級生
口を開こうとした瞬間、開いてしまったエレベーターの扉。



………現実って甘くねぇ…



和華に背を向けたまま、少しだけ振り返り小さく告げた。

「…ごめん」


人志の部屋に入ると同時に、部屋の中にある浴室に駆け込み、換気口の中に隠してあるタバコを取り出した。


誰に聞いた訳でも無いけど、人志と一哉の考える事は大体想像がつく。

タバコの隠し場所だって、ここに無かったら持って来て居ないか、自分で持っているかのどっちかだ。



………なにが『ごめん』だ馬鹿野郎。あのまま残って告れば良いだけじゃん。まともに顔も見れないなんて…
腰抜けも大概にしろよ俺!



ため息混じりに煙を吐き出し、頭がクラクラする懐かしい感覚に襲われた。

タバコを吸い終えた後、ポーカーをしている輪の中に入っても、頭に浮かぶのはさっきの事ばかり。

偶然飛び込んできた最高にして最大のチャンスを、無駄にしてしまった自分が嫌になる…


「洋ちゃん?」

「ん?」

人志の心配そうな声にも、間抜けな声を出す始末。

「そんなに覗けなかったのがショックだった?」

「ちげぇよ。…ちと寝る」

力無く横たわり、腕で視界を遮った。



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