年上。
それが何十万部と売れているのだから、俺は唖然とするしかない。

横文字の活字小説など、見ているだけでも酔いそうだ。

参考書の横文字とは明らかに違うその内容には、流石の俺でも無理だった。

それに、とある小説の表現を借りるとするのなら、書籍化された大半のケータイ小説は、確実に「甘すぎる味」だ。

舌の上に残る、どろりとした蜜のようなあの後味が、俺には気に食わない。

蜂蜜に更に大量の砂糖を加えたような感じがするのだ。それに、展開も所詮見えている。

そんなものを俺が好んで読むはずがない。俺が最初に読んだのは、ミステリーなのだから。

アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を読んだ人はどれほどいるのだろうか?

和訳された英語の小説は、文章におかしな点も見られて、面白みが半減したりするのだが、この小説はそれがなかったのだ。

さて、どうでもいい方向に思考が進んでしまったようだ。

担任が来るまでの間、しばらく俺は読書に集中する事にしよう。

そうして、どれほどかの時間が流れた。それが何分だったのか、俺には分からないが別に気にする必要もないだろう。

そうして、新しい担任は扉を開いて現れた。

読書をしていた俺は、扉が開いた音に反応して目をそちらの方へと向ける。

去年と同じ教師が担任なら、俺は見もしなかっただろう。

だが、そいつは去年別の高校に移動したので、新しい教師が担任としてくる。

その事に興味を持っていたのだが……。

俺は思わず、入ってきたその人物に見とれてしまった。

きっと、俺はこの時に初めて恋というものを覚えたのだろう。

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