年上。
……正直に言ってしまおう。俺は絶対に嫌だ。

何が好きで、自己紹介などをしなければならないのだ。

こんな事に時間を費やしているのなら、ダンテを読んだ方がいい。

神曲は読むのに、それなりの時間を要するのだから。

まあ良い。別に、自分の順番が来るまでおとなしく読書をしておこう。

溜息一つ、俺は読書を再開した。

自己紹介は滞りなく進んで行き、とうとう俺の順番になった。途中で少々、おどけた発言をした人物もいたが。

「俺の名前は、野々宮誠司。趣味は読書。得意教科は特になし。苦手教科は体育」

それだけ言うと、俺はとっとと着席する。何が好きでこんな事をしないといけないのか、俺には理解に苦しむ。

手元にある名簿で出欠をとれば、自然と誰が誰なのか覚えるはずだ。

ま、俺はそんな面倒な事はしないが、仕事なら割り切ってするだろうな。

そしてその後は、何時も通りの定番。係り決めだ。

委員会のものも含めて、やることになる。

さて、とっとと楽な仕事についておこう。

最後まで知らぬ存ぜぬでは、流石に後で一番嫌な仕事が回って来る事になるだろう。

それに、家に帰っても読書以外にやる事は特に無い上に、部活動もしていないのだから。

さて、手始めにやはりクラス委員長の選定だが……。

これだけはごめんだ。何を言われても、俺は絶対にやらない。やりたくはない。

これまた予想通り、話し合いは平行線。という事は適当な人物が推薦されるのだが、俺はその範疇にはいない。

さて、どう転んでも俺には関係ないな。

そうして空を見上げる。

開け放たれた窓からは、春風が一片の桜の花びらと共にさらさらと舞い込んでいた。
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