lotlotlot3-血脈の果て-
ひとつは澱み、ひとつは軽やかに
ヨダセンの容態は、もう普通と変わらなくなっていた。心の中に獣が生まれた事以外、どこも変わっていない。以前のままだ。獣はまだ歩く事も出来ない。これから成長していくのだろう。そして・・・。

ヤスタツに言われ、ヨダセンは中庭に来ていた。暖かい日差しが心地よかった。
「いかがですか?久しぶりの外は?」
「そうだね。なんか、変な感じだよ。すごく長い間、どこかに行ってたような・・・不思議な感じだね。」
「長い間どこかに行ってたような感じですか?そんなに長い間眠っていたわけではないんですけどね。」
ヤスタツの言う通り、ヨダセンが眠っていたのは一週間ほどだ。しかし、その間に思っていた以上に、歯車は回っていた。

「た、大変です。」
兵士の一人が、王の元に駆け込んできた。王はちょうどお茶を楽しんでいたところだ。そこに不躾な兵士が来たのだから、気分を害するのは当然だった。
「何事だ?」
不機嫌な返事に、一瞬兵士はたじろいだ。しかし、そうも言ってられない理由があった。
「非礼はお詫び申し上げます。しかし、大変なのです。」
「何が大変なのだ?」
兵士の様子がただ事ではないと告げている。王は耳を傾ける事にした。
「ヨ、ヨダセン様が怪我をされました。」
「何、ヨダセンが?して、容態はどうなっている?」
兵士は口ごもった。
「それが・・・。」
「どうした?」
「正直申し上げて・・・芳しくありません。今、ヤスタツ先生が診察されていますが・・・意識が戻らないとの事です。」
王は立ち上がり、兵士に詰め寄った。
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