lotlotlot3-血脈の果て-
「おおて様、お父上がお呼びです。」
自室にいたおおてに声をかけた。
兵士は緊張し、喉がカラカラだった。所々、声がかすれていた。下っ端である自分が、王に、王子に、一日でその両名と話すなど二度とないであろう事だからだ。
「父上が?」
「はい。」
兵士はおおての目を見て話そうとした。しかし、おおては俯き、兵士と目を合わそうとしない。
<怒られるに決まっている・・・。>
どうにかして、王の元に行かない方法を考えた。しかし、思いつくものは何もない。頭は真っ白だ。
「さぁ、参りましょう。」
王子がどんな事を言っても、王のところに連れて行くのが、彼の使命だ。出来る限りの笑顔を作り、王子を誘った。
「やだ。」
当然と言えば、当然の答えだ。それは百も承知だった。それでも負けずに言った。
「そんな事言わずに。さぁ、参りましょう。」
「やだったら。怒られるに決まっているんだから・・・。やだよ。」
「大丈夫です。お父上は怒ったりいたしません。」
口からでまかせだ。しかし、そうでも言わないと、絶対に部屋を出ないだろう。
「ホントに?」
しめた、そう思った。それを顔に出さないように、慎重に対応した。
「えぇ、ホントです。私が見た限りでは、お父上は怒っている様子はございませんでした。」
これは本当だ。少なくともさっきまでは、怒っている様子はなかった。その姿に違和感を覚えたくらいだから、間違っていないだろう。
こうして、嘘と本当を織り交ぜながら、兵士はおおてを王の元へと連れ出した。
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