lotlotlot3-血脈の果て-
窓の外に、また蝶が舞った。
「char。」
さっきと同じように言ってみた。しかし、結果はどうだろう。何も起きない。当然だ。想いがないのに唱えても、言術は力を発揮しない。ただ、そう言う事がわかるようになるのは、これよりずっと後だ。世界ではじめて言術を使ったヨダセンが知る由もない。
「?」
一生懸命、さっきとの違いを考えた。声を高くしてみたり、ポーズを取ってみたり。が、どれもうまくいかない。試行錯誤を繰り返した。
でも、ダメだった。
あきらめかけ、また外を眺めた。今度、目に入ったのは木になっていた赤い実だ。いつもメイドがもぎたてのものを持ってくる。ヨダセンはこの実が大好きだった。とても甘く、疲れが一瞬で消えていく。さっきまでの試行錯誤で疲れが溜まったのだろう。だから、その実に注意がいった。
<・・・疲れたな・・・。>
まず、それが頭に浮かんだ。
<あれ・・・食べたいな・・・。>
視線は赤い実に釘付けだ。そして、さっきのようにならないかと思い、もう一度だけ唱えてみた。
「char。」
また起きた。手が伸びる。どんどん伸びる。もう赤い実は掌の前にある。軽くつついてみる。
「触れる・・・。」
いつも感触と同じだ。こんなに腕が長いのに、柔らかくもなくかと言って固くもなくと言う独特の感触が伝わってくる。
「戻れ。」
実を掴み、そう念じた。その時には、実は手の中にあった。それを口に頬張ってみる。
「ほ、本物だ。」
甘さが謎を氷解させた。
「もしかして・・・強く念じる・・・想いが大切って事なんじゃ?」
そう思うと試さずにはいられない。
<赤い実が・・・もう一個欲しい。>
強く念じた。
「char。」
今度はさっきよりも速く、手の中に実が訪れていた。
「間違いない。そうだよ、そうなんだよ。この力が使えれば、魔法が使えなくたって・・・おおてに負けたりなんかしない。そうなんだよ。」
興奮が収まらない。
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