lotlotlot3-血脈の果て-
「魔法と違うんだから、なんか名前をつけなくちゃな。」
ヨダセンは東洋の国にいると言われている忍者と言う者達が大好きだった。その特異な格好ももちろんだが、何より忍術に憧れていた。
忍術は魔法と違って、どんなものでも修練さえ積めば使えるようになる。そこに惹かれた。もしかしたら、無意識に自分が魔法を使えない事を悟っていたのかもしれない。とにかく憧れていた。
「術って言うのは格好いいよな?って事は、術って字は使うとして、うーん、何がいいかな?」
色々考えた。
ヨダ術。セン術。等・・・。
しかし、ピンと来ない。
「かっこいい名前ないかな・・・。」
最近、自分の中で流行っているもの、忍者以外に気に入っているもの、頭を巡らす。すると、やはり東洋のものが頭に浮かんだ。習字だ。時に強く、時に弱く、白と黒のコントラストが織りなすそれに、ヨダセンは深い感銘を受けていた。さらにそれが文字だと知り、感動はいっそう深まった。
その時見た漢字、言。言葉と言う意味を持つらしい。ピンときた。
「さっきのやつって、なんか特別な言葉だよな?魔法とは全然違う・・・。って事は特別な言葉の術だから、言術、言術なんていいんじゃない?うん、かっこういいよ。」
興奮した。自分しか使えない術、言術。そう思うだけで、ワクワクは果てしなく続いた。

それからは毎日練習だ。どうすればいいのか、一人研究し続けた。そして、色んな事がわかっていった。

・自分の想いに合わせて、一種類の呪文で色々と変化する事。
・想いは一度だけ、とにかく強くする事。繰り返したりしても意味がない。
・気持ちが怖がっていたり、不安になっていたりする時には使えない。想っているつもりでも、感情に想いを潰されてしまっている。
・使える範囲が決まっている。この範囲を超える事は出来ない。

ヨダセンは、この範囲について不満を持っていた。なぜなら、魔法には言術より射程の長い呪文がある。万が一、あくまでも万が一だが、おおてと対峙しなければいけない時に、圧倒的に不利になる。それだけは避けたかったのだ。
「どうしたらいいんだろ?」
と言っても、誰も教えてくれない。自分が言術の創始者なのだから、当然と言えば当然だ。ただ、創始者だからこそ、魔法使いに負けたくないと言う気持ちは強かった。
考えた。考え抜いた。
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