lotlotlot3-血脈の果て-
エーマリリスの左手には、言葉人形があった。アイワイはそれに違和感を覚える。エーマリリスは右利きなのだ。
「お父様、右手どうかしたの?」
「・・・あぁ、少しな。」
言葉にためらいがあった。
「えっ、診せて。」
エーマリリスに駆け寄る。そして、父親の右手を診ようとした。しかし、それは出来なかった。ないのだ。エーマリリスの右手は手首から先がなかった。
「これって・・・。」
「まさか、こんなヘマをするとは・・・。どうも、さっきの一瞬で右手を持ってかれたらしい。まぁ、人が中間空間にいると言うのは、そう言う事だからな。」
「そんな・・・。」
悲しかった。ただ、涙は出てこなかった。それは自分の行動の浅はかさに、自身に対して怒りを感じていたからだ。
「気にするな。常々実験したいと思っていたんだよ。それが思わぬところで叶ったと思えばいい。そんな顔をするんじゃない。」
父親に促され、少しでも表情を柔らかくしようとしたが、どうにも無理だった。
「ご、ごめんなさい。」
心の奥から謝った。それしか出来なかった。
「それより、そろそろイバーエ君がここに来るはずだ。」
「ここにですか?」
床には小さくなった言葉人形が転がっているだけだった。
「あぁ、そうだ。一瞬だが、双方の言葉人形の距離をゼロにした。そして、イバーエ君の持っていた言葉人形をここに連れてきた。と言う事はだ・・・。」
アイワイは気づいた。
「言葉人形がイバーエ君を連れてきてくれるんですね。でも、そんな事が可能なんですか?」
言葉人形を使っている時、その使用者と言葉人形は対にならなければいけない。その間、立場は言葉人形の方が上だ。何かあれば、言葉人形に使用者は従うしかない。
つまり、イバーエの言葉人形がここにある限り、イバーエもここに来ざる得ないのだ。と言っても、こんな無茶な事をした者など過去に存在しない。本当にここにイバーエが来るのか、アイワイは疑心暗鬼になってはいた。
床に転がっていた言葉人形に変化が現れた。徐々にイバーエの形に近づいていく。少しずつ、少しずつイバーエだとわかるようになっていく。
同時にその側に光が集まりだした。それが人の形になっていく。
言葉人形と光、そのふたつが同じ形になった。
アイワイは叫んだ。

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