lotlotlot3-血脈の果て-
決壊する心は、暴走する力を加速させる
イバーエは夢を見ていた。恐ろしい夢を。
どこかはわからない。ただ、とにかく大きな家である事は間違いない。そこに男の子がいた。名前をヨダセンと言うそうだ。

ヨダセンは城をこっそりと抜けた。言術の事は誰にも言ってないし、これからも誰に言うつもりはない。だから昨日思いついた実験は、誰も人のいないところでやりたかった。
城の西にある城壁。そこにちょっとした仕掛けを造っておいた。そこは衛兵達の目が行き届かない場所だった。
そっと手を触れる。するとどうだろう、ヨダセンの体が城壁と同化した。それから吸い込まれるように消えた。
今度は城壁の外側に変化が現れた。遠くからではわからないが、ちょうどヨダセンの大きさに膨らんだ。その膨らみは城壁を離れた。しかし、色は城壁のままだ。城壁が歩いていると言っても過言ではない。その色が徐々に薄くなっていく。代わりに肌色が表に出てくる。ヨダセンだ。
「脱出成功!」
あとは目に前に見える丘を越えるだけだ。早く試したくて、とても歩いてなんかいられない。思い切り駆け出した。
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