lotlotlot3-血脈の果て-
城を抜け出した時に使った城壁の前に着いた。同じように手をかざす。すると、また城壁の中へと溶け込んでいった。ここまでの手順は同じだ。ただ、ここから注意が必要だ。いくら城の中で人の目が届かない場所と言っても、まったく人がいないとは限らない。この間も衛兵のシムスがさぼっていて、なかなか外に出れなかった。だからまず目だけを出して様子を伺う。それは城壁が瞬きをしているように見えた。
二回瞬きをしてから、辺りを見回す。どうやら今日もすぐには出れなそうだ。なぜなら王と大臣の何人かがそこにいたのだ。
<なんで、こんな所に・・・?>
普通に考えれば王や大臣が、こんな場所で話をするのはあり得ない。立派な会議室が城にはいくつもある。

「まさか、こんなところで会議しているとは誰も思わないだろう。」
王は言った。
「そうですな。重要な事ほど意外な場所で。これは鉄則ですからね。」
大臣は答えた。
<えっ、もしかして・・・。>
ヨダセンは期待した。この話ぶりから考えれば、かなり重要な事が聞けるかもしれない。思い切り聞き耳を立てた。
「では、本題に入ろうか?」
「はい。お世継ぎの事でしたね?」
世継ぎと聞いてヨダセンは思い出した。もうすぐ次の王を決める儀式がある。どうやら、その話らしい。ただ、それが具体的にどんな事なのか、ヨダセンはよく知らなかった。
「おおてで決まりだと思うのだが、皆はどう思う?」
王の言葉はいきなりだった。あまりにさらっとした言葉に、ヨダセンは自分の耳を疑った。とても、とても重要な事のはずなのに、王の決断は一瞬だった。おおてとヨダセンは双子だ。そんなに大きな違いなどない。なのに、こうも簡単に決められるとは思いもしなかった。
<ど、どうして・・・そんなに簡単に決めるの?>
深く傷つく。幼い心は張り裂けそうになる。
「異論はありません。」
返事もあっさりしていた。大臣達の中には、自分の事を可愛がってくれていた、ほほらんもいた。なのにだ。この仕打ちは心を崩壊させるには十分だ。
<ほほらんさんまで・・・。>
城壁が濡れる。二つの線がはっきり見える。
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