lotlotlot3-血脈の果て-
どうして父親というのは、こうも娘に甘いのか?
鮫が空を泳いでいるのを見た事があるだろうか?

彼女はその鮫にまたがり、帰路を急いでいた。
<早く、もっと早く・・・。>
今でも鮫の速度は、瞬きをしたら見失うくらいに速かった。しかし、それでも彼女にとっては遅かった。それだけ彼女の気持ちは焦っていた。
遠くからでもわかる大きな、とても大きな屋敷が見えてきた。彼女の家だ。
庭の中央にある噴水の周りを二回、回ってから玄関の前に横付けした。
「こら、余計な事しないの。」
鮫を軽くたしなめた。
彼女が着くや否や、執事のブリアが現れた。
「アイワイお嬢様・・・。」
ブリアの話を遮り、アイワイは言った。
「お父様は?」
「はい、奥の研究室にいらっしゃいます。」
「わかった。ありがとう。」
長い、とても長い廊下を走った。

アイワイの父の名は、エーマリリスと言う。この世界に、その名を知らない者はいないだろう。パウパウ堂と言う言術や魔法を凝らした商品の販売で、一躍名を馳せた人物だ。
「お父様っ。」
「アイワイ、どこに行ってたんだい?」
アイワイの年齢は、十三歳だ。その彼女の父親と言うには、エーマリリスはだいぶ老けていた。知らない者が見れば、祖父と孫と思うに違いない。
「そんなのはどうでもいいのっ。それよりこれを見て。」
アイワイの掌には、白い玉があった。この玉にエーマリリスは見覚えがあった。リーグに渡したものだ。アイワイはリーグの元に行ってたのだと、その玉が告げる。哀しい思いが、エーマリリスの心を埋めた。
「これは・・・。」
「お父様がリーグ君にあげたやつよね?」
リーグの元に行った事を、アイワイは隠そうともしない。それがますます哀しさを誘う。
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