lotlotlot3-血脈の果て-
おいしいものは最後にとっておく
イバーエが子供の頃の話だ。祖父のメルツと楽しく夕食をとっていた。
イバーエの皿の上には、大きなハンバーグがあった。はじめにパン、そしてスープ、付け合わせの野菜・・・。いっこうにハンバーグに手をつけようとしない。
「どうしたイバーエ?お腹でも痛いのか?」
「ううん、痛くないよ。なんで?」
「なんでって・・・。お前、さっきからハンバーグに手をつけてないじゃないか。」
イバーエは大きな声で笑った。
「なんだ、そんな事か。」
「そんな事って、お前。」
イバーエの家はそんなに裕福な方ではない。ハンバーグも月に一回出ればいい方だった。
「だってさ、ハンバーグが大好きだって、じいちゃん知ってるじゃないか。」
「あぁ、だから心配しているんだろ?」
「逆だよ、逆。たまにしかハンバーグ食べれないんだぜ。だから、おいしいものは最後にとっておくのさ。」
胸を張り、えばって言った。
「そうか、そうか。おいしいものは最後にとっておくんだな。」
ふたりは笑った。
そうイバーエはおいしいものはとっておく性格だ。最後に一番いいものをとっておく。

イバーエは笑っていた。
暗黒の翼を広げ、どんどん、どんどん近づいていく。大きな屋敷が見えた。それはエーマリリスの屋敷だ。
窓辺に人の影が見える。
「いた。」
影に向かった。思った通りだ。その影はリーグだ。
ガラスを破り、部屋に入った。
記憶がなくなったせいなのか、リーグは感情らしき感情も消えつつあった。ガラスが割れる音にも、まるで動じない。
「いい度胸だな。」
イバーエは笑う。
「?」
リーグはまるでわからないと言った感じだ。だから聞いた。
「誰?」
しかしイバーエは答えない。返事など必要ないからだ。

魔法使いの最期の血は、エーマリリスの屋敷の床のシミになった。
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