lotlotlot3-血脈の果て-
「そうだな。これがどうかしたのか?」
「直してほしいの。」
「直す?見たところ、どこもおかしくないように見えるが・・・。」
そう言いながら、手に取った。アイワイの言っている意味がすぐにわかった。ちょうど、アイワイの掌に触れていたところが、大きく割れていた。
「これを直すのかい?」
「そう、お父様なら出来るでしょ?」
エーマリリスは難しい顔をした。
「傷は直せるが・・・。この玉にはレンスを固定していたんだよ。その魔法がこの割れから、だいぶ漏れてしまったようだ。すると、どこまで記憶が残っているか・・・。こぼれた記憶は取り戻せないよ。」
白い玉は思い出を記憶する。魔法の力でそれを実行する。その源である魔法がこぼれてしまっては、確かに父親でも元通りにするのは難しそうだ。それでも、もしかしたらと言う事もある。
アイワイはもう一度聞いた。
「元には戻らない?」
「あぁ、無理だな・・・。」
「わかった。じゃ、傷だけ直して。あとはそれから考えるから。」
アイワイは前向きだった。そんな娘の願いを、むげに断れない。
「二、三日時間をおくれ。それまでに直しておくから。」
「ありがとう。じゃ、よろしくね。」
それだけ言うとアイワイは研究室を出ていった。

部屋に戻ると、アイワイは言葉人形を取り出した。
「イバーエ君、イバーエ君。」
僕の名前を呼んだ。けど、返事は出来なかった。その頃、僕は思わぬ戦いを強いられていたからだ。
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