ちぇんじ☆
 真里は天を仰いだままでまだ何か呟いている。

……これは本当にマズイ状態なんじゃないかな?

 ドラマとかに出てくる痴呆症になった老人のような雰囲気だ。

 よくよく考えてみれば真里から抜け出た私が、隼人くんの体を使っているとはいえ普通の人と変わらない状態で過ごせているのだ
 その私の分の魂が抜け出てしまった真里が今まで普通に過ごせていたことが奇跡的だったのかもしれない。

 こうなってくると真里を説得して納得させてからエッチするとか悠長なことを言っている場合じゃないのかもしれない。
 一刻も早く『元に戻る方法』を実行しないと取り返しのつかないことになりそうな気がする。

――今の人事不省に陥っている真里とそのままやってしまうべきだろうか?

 ふいにそんな考えが頭の中をよぎる。
 処女だからとか真理の考えも尊重してとかそんな事を言っていられないような気がする。
 このままでは……ヘタすると命に関わる。

「……い……たい」

 真里がこちらに向かって急に呟いた。
 私に向かって何か話しかけていたみたいだ。
 考えごとに夢中になっていて何と言ったのか聞き取れなかった。
 ひょっとすると何か重要なことを呟いたのかもしれない。
 そう思い真里の口元に耳を近づけ何と言っているのか聞き取ろうとする。

 次は何と言ったのかハッキリ聞き取れた。

「おトイレ、行きたい」

………………行ってらっしゃいな。
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