ちぇんじ☆
「――そろそろ出発しなきゃ」

 沈黙を破るカズちゃんの言葉は別離を告げるための言葉だった。
 いつ終わるとも知れない、病気との闘いへの旅。
 そこには私は付いて行けない。
 そして――いつ再び会えるか分からない。

 見送りの言葉をかけられないまま、カズちゃんは車に乗り込む。
 どんな言葉をかければ良いか分からないまま衝動的に車の傍に駆け寄る。

 ドアの横に立ったとき、車の窓が開いた。
 後部座席に座るカズちゃんが開いた窓からこちらを見ていた。

「――がんばってくるね」

 私の顔を見てカズちゃんが小さく言った。
 寂しそうな、今にも泣き出しそうな顔で。
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