ちぇんじ☆
『僕がね、直哉の体の中に入ってるんだ』

 カズちゃんが直哉くんの体の中に入ったままの状態で特訓によって会得した霊力のコントロールを行う。
 直哉くんの体が持っていた霊力は思いのほか大きく、完全にはコントロールできなかったそうだ。
 でも、引き付けていた悪霊を引き離すくらいの時間は稼ぐことができた。
 これによって直哉くんを苦しめていた霊障は姿を消した。

 次は、直哉くんの持つ霊力をカズちゃんが引き受けたまま体に戻る。
 先ほどを同じ手順で――まだ眠ったままの、今度は穏やかになった直哉くんの呼吸に 合わせてカズちゃんが呼吸する。

 最初に入れ替わったときと同じ感覚がカズちゃんを襲う。
 今度は――直哉くんの霊力を自分の中に保ったままにすることを頭の中に置いて。

――こうしてカズちゃんは直哉くんの霊力の大半を自分の中に移すことに成功した。

 そして、カズちゃんの瞳は完全に銀色に変わった。
 自分の霊力に上乗せされてしまった直哉くんの霊力。
 二人分の霊力はコントロールする術を見につけたカズちゃんの手にも余るものだった。
 普段から抑えるようにしておけば悪霊は引き寄せられることはない。
 だが、それを続けることはカズちゃんの心身に大きな負担をかけることになる。

 それ故に、カズちゃんはこの山奥――霊力が安定している『場』に移り住んだのだそうだ。
 この山の清い霊力にも支えられてカズちゃんは日常生活を送れるようになり――現在に至る。
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