ちぇんじ☆
 そして……あっという間に夜は訪れた。

 そうそう、余談になるんだけど、お祖父ちゃんの山から麓の往復時間が新記録更新しました。
 私とカズちゃんが『お清め』から戻ったときにすでにお祖父ちゃんが戻ってきてたのね。
 思わず「早い!」って言ってしまったんだけど、その時のお祖父ちゃんの返事が――。

「うむ! 往復で一時間を切ったんじゃ! やはり走るとタイムの伸びが違うの~」

――なんでこの人はオリンピックのマラソン代表じゃないのだろう?

 これが私の率直な感想。

 と、まあ関係の無い話は置いておいて。
 今はおう晩御飯も食べ終わって、後は『閨の儀式』の開始を待つばかりだ。
 お祖父ちゃん曰く――『丑三つ時に行うのが一番成功率が高いんじゃ』ということなのでそれまでは待つつもりだ。

 カズちゃんは先にひとまず睡眠をとることになった。
 肉体は私のものでも精神はやはり小学生。夜更かしには向いていないようだ。
『閨の儀式』の三十分前には起こしてあげる、ということで既に熟睡している。

 今は囲炉裏の部屋にお祖父ちゃんと二人きり。
 灯り代わりにもなっている囲炉裏の火を囲んで無言のままだ。

 私は『閨の儀式』に対する緊張で会話どころではない。
 お祖父ちゃんはそんな私を気遣ってか、何も話しかけてはこない。
 そんな感じで時間だけはどんどん流れていった。

――夜はどんどん更けていき、時刻は丑三つ時……午前一時を迎えようとしている。
< 326 / 449 >

この作品をシェア

pagetop