ちぇんじ☆

一時閉幕

 明けて翌日。

 昼前には私は麓のバス停にいた。

「『入れ替わった』ばっかりで霊力が不安定じゃから、山を降りては危険なんじゃ」

 お祖父ちゃんから説得を受けて、カズちゃんは泣く泣く山小屋で私とお別れを済ませた。
 涙でグシャグシャになったカズちゃんを優しく抱きしめて約束をした。

「また、すぐに会いにくるから……ね!」

 そう、これから何度でも会いにくる。
 休みになれば、ほんの少しの間でも会いにこよう。
 それがカズちゃんの助けになるなら。

 カズちゃんへの感情は、家族に対する愛情から異性に対する愛情へと変わっていた。
 好きでたまらなくて、その人のために何かしてあげたくて――。

――それがこの夏休みに私に起こった『変化』。

 バスを待つ間、山の向こうに隼が空を旋回するのが見えた。
 まるで、カズちゃんの住む山を守る護衛のように。

――私のいない間の山の護りは頼んだよ!

 心の中でなぜか隼にお願いする。

 さて、これからが忙しくなるなぁ。
 家に帰って、ママを説得して。
 残ってる宿題も一気に片付けなきゃなぁ。

――『入れ替わり』とまでは行かないが、これからも少しずつ私の『変化(ちぇんじ)』は続く。
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