ちぇんじ☆
「うーん、『入れ替わってる』時……ね」

 お母さんの声が急にトーンダウンした。
 あれ?ヘンなこと聞いちゃったかな?
 少し考えるような素振りを見せた後、お母さんが再び話し始める。

「実はね、あんまり覚えてないのよ」

 あら、やっぱりもう十七年も前になると覚えてないのかぁ。
 ちょっぴり残念な気分だ。

……でも、こんな強烈な体験なのに忘れちゃうんだろうか?

 私も元に戻って、十年もすれば……この体験を覚えていられなくなるのかな?

「やっぱり……昔のことだから?」

 ちょっとでも覚えていることがあるなら、それを聞いて共感を楽しみたい。
 そんな軽い気持ちで話を続けようとしていた。

 お母さんは必死で何か思い出そうとしてくれてはいたが、結局何も思い出せなかったようだ。
 こんな返事を私に寄こす。

「『入れ替わり』の間の記憶って、夢みたいに曖昧なものになってるのよ。ごめんね思い出せなくて」

 少し申し訳なさそうに私に謝るお母さん。
 だが、私の心の中は――お母さんの今の言葉に凍り付いていた。

――夢のように曖昧……消える?
< 333 / 449 >

この作品をシェア

pagetop