ちぇんじ☆
「――マリちゃん? どうしたの?」

 そんなお母さんの声で急速に現実に引き戻される。

 真剣に考え込んでいたようで。
 お母さんが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
 心配かけちゃいけないよね。

「え? ううん、なんでもないの」

 お母さんに嘘をつく。
 そんな私の顔をもう一度覗き込みながら、

「そう? 今にも消え入りそうな感じで悩んでたみたいだから――」

 す、鋭いな……。
 でも、考えるとか悩むといったレベルの話じゃ……ないんだ。
 何かのお話でも出てきたような気がする。

『魂だけになった者の体験は、元に戻った瞬間、夢のように儚く消えていく』

 お母さんは『入れ替わっている間の記憶は曖昧だ』と教えてくれた。
 だとすれば……今ここにいる私は恐らく――元に戻った瞬間に消えるのだろうか?

 もしも、それが決まっていることであるのなら――私にはするべき事がある。
 私がこの世界から『夢』として消える前に……しておくことが。
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