ちぇんじ☆
(おい! アホマリ! 時間だぞー!!)

 短い時間だったためか、一気に深い眠りに入っていたのか。
 隼人くんの起こしてくれる声ですぐに目が覚めた。
 時計を見るとピッタリ七時。
 ヘタな目覚まし時計よりも正確で信頼がおける。

「ふぁぁ……おはよ」

 欠伸まじりで隼人くんに二回目となる朝の挨拶をする。

(『おはよ』じゃねえよ……ったく)

 少し不機嫌そうな隼人くん。
 あはは、ちょっとやりすぎたかな?
 色んなことに踏ん切りがついたしまったせいもあるが、やりたい放題をすることで自分の心を軽くしているんだと思う。

――ごめんね、でも……やりたいようにやらせてね。

 心の中で隼人くんに謝る。
 心の外の行動は――隼人くんに一気に近付く。

「あれ? 隼人くん……その顔の――」

 そう言いながら隼人くんの顔を覗き込むフリをして――チュッ!
 自分の唇を少し尖らせて、隼人くんの頬っぺたにキスする仕草をしてみせた。
 実際には魂だけの隼人くんなので私の唇には何も触れた感覚はないけど。
 それでも隼人くんは十分に慌てている。

(お、おい! おま、お前!! 何してんだ!?)

 手でキスした辺りを拭うような仕草を見せる隼人くん。
 ちぇっ、せっかく『おはようのキス』をしてあげたのに感じ悪ーい。
 まあ、照れ隠しだと思っておこう。

「えへへー、嬉しいくせにー」
(ばっ! バカマリ!! 自分の顔にチューされて嬉しいわけないだろが!)

 そう言うワリには顔がニヤケている隼人くん。
 魂だけの存在じゃなければ顔が真っ赤になってるのとかが確認できたんじゃないかな?
 ちょっとだけ自尊心を満たせたような気がする。

「さ、朝ご飯食べに行こーっと」

 隼人くんの機嫌も直ったみたいだし。
 私だってそんなにヒマじゃないんだよね。
 ちゃんとご飯食べないと。

――あと何回食べれるか分からないんだし。
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