ちぇんじ☆
 公園でのデートは夕方まで続いた。
 真里と隼人くんの毒にも薬にもならないような、中身のない会話が延々と続き、私はそれを横で眺めているだけ。
 二人から見れば、きっと私は『ソバ屋に置いてあるタヌキの置物』並に存在感が無いのではないだろうか?

 まあ、簡単に言えば昨日と同じく『仲間外れ』状態だったのだが、それでも私は昨日のように嫉妬したりはしていない。
 むしろ真里と隼人くんが仲良くしているこの光景が嬉しくて仕方ない。

 周囲の景色が夕焼けに染まり、公園の中にも人がいなくなった頃やっと「そろそろ家に帰らなきゃね」といった話になった。
 真里も隼人くんもお互いに別れるのがツラそうだ。
 お互いにどちらかが先にベンチから立ち上がるのを待っていて、両者とも一向に立ち上がる気配がない。
 このままだと夕暮れの時間を過ぎて夜になってもこのベンチに座り続けていそうな雰囲気が漂っている。

 まだ恋人同士ってワケでもないのに分かり易い行動だ。
 この『入れ替わり』状態が終わったら、この二人はすぐに付き合い出すだろうな、そう確信させてくれる。

――そうでなきゃ、安心して消えることはできないか……。

 ホッとするような、寂しいような気分に急に襲われる。
 自分がいなくなってしまうことは覚悟したはずなのに……まだ、少し怖いような気持ちが残っているのだろうか?

ブンブンブン!!

 頭を思いっきり横の振る。
 自分の弱い心を身体の外に追い出すように。

――この二人のためにも!みんなのためにも!

 私の周囲の人が幸せになるために――私はいなくなっても構わない。
 ただ、みんなの心の中に――私の欠片が残ってくれれば良い。
 だから……だから、私は『約束』を残す。

 私がいなくなった後でも、みんなが私を思い出すことで、記憶の中で生き続けるために――。
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