ちぇんじ☆
 カズちゃんと約束を交わした直後。
 コンコンとベランダの窓を叩く音がした。
 窓を見ると――お母さんがテーブルを指差しながら微笑んでいる。

――あ、晩御飯の準備終わっちゃったんだ。

「さ、入ろうぜ?」

 カズちゃんも私を部屋の中に入るように促してくる。

「うん、カズちゃん……ありがとね!」

 カズちゃんにお礼を言って、ベランダの窓を開ける。
 部屋の中から漂ってくる美味しそうな匂い。

「何の話をしてたの?」

 お母さんが聞いてくる。

「ないしょー、ね、カズちゃん」

 後ろのカズちゃんに同意を求める。
 ちなみに、今回は『カズちゃん』の後ろにハートマークを付けておいた。
 せっかく私の『お願い』を聞いてくれたわけだしね。
 これくらいはしてあげてもバチは当たらないだろう。

 私の行動にカズちゃんが何だか照れている。
 傍目から見れば『男子高校生に呼びかけられて照れている美青年の図』なのだが――なんだか可愛い。

「ふーん、まあいいわ。晩御飯食べましょ」

 お母さんに促されるまま食卓につく。

 並んでいるのは、鮭のムニエル、野菜スープ、サラダにペペロンチーノ。
 今日はかなり洋風に攻めてきたね。
 しかし、相変わらず美味しそう!

――いっただきまーす! ……落ち込んでなんかいられないよ。残された時間はあと僅かなんだから。
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