ちぇんじ☆
 『待ってくれ』、と叫んだ後、隼人くんは私の元にツカツカと歩み寄ってくる。
 そのまま私の耳に顔を寄せ、小声で語りかけてきた――。

(お前! カズさんに聞いてきたぞ! 何で!? 何で消えるって分かって!)

 もし、真里がこの場にいなければきっと隼人くんは私を怒鳴りつけるつもりだったのだろう。
 小声の口調が声のトーン以外は激しいものとなっている。

「消えるなんて……決まったワケじゃないよ」

 小声で隼人くんに返す。
 チラっと横を見るとベッドの上から真里がこちらを不審そうな眼差しで見ている。
 視線を逸らした私に隼人くんが再度問い詰めてくる。

(嘘つくな! 昨日からおかしいとは思ってたけど――やっぱり自分が消えるかもしれないのを知ってたんじゃないか!)

 隼人くんの発した言葉――。
 私の中のある感情の導火線に火を点けた。
 その感情の名前は――『怒り』だ。

――『やっぱり』? 『知ってた』? それは……アンタも同じじゃんか!

 アナタが私にとった冷たい態度の理由は?
 それは……それは……それは『私が心残りなく消えれるようにすること』だったんでしょ!?

 心の内に収めきれない『怒り』は口を通して体の外に出る。

「関係ないでしょ!? 隼人くんには――ちゃんと『真里』が残るじゃない!」

――とうとう、言ってしまった。私が消える『理由』を。
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