ちぇんじ☆
 私の言葉を受けて、隼人くんは急に押し黙ってしまった。
 数秒ほどの沈黙が続いた後、いきなり後ろを振り返る隼人くん。
 振り返りざまに真里に向かって――、

(真里ちゃん、コイツ調子悪いみたいなんだ、やっぱりもう少し延期にできないかな?)

 いきなり勝手なことを言い出す。
 慌てて隼人くんの言葉を否定する。

「な、何言ってるのよ!? 延期なんて必要ないからね! 調子も悪くないから!」

 真里は私と隼人くんの顔を交互に見比べながら眉間に皺を寄せる。
 『どっちの言うことを信用すれば良いの?』そう言いたげな顔だ。

 私は隼人くんの耳に口を近付け、小声で抗議する。

「何でそんなことを言い出すのよ?」
(お前こそ何をアホなことを言ってるんだ? 真里ちゃんは真里ちゃん、お前はお前だろうが。
お前が消えて真里ちゃんが残るってどういう意味だ?
俺は――そんなことは望んでない。
もし……消える気なら、俺は全力で阻止するからな?)

 隼人くんの言葉に私の怒りは削がれてしまった。
 だが、それでも一つ疑問が残る。

――なぜ冷たい態度をとってたの?

 私が消えると分かっていたから冷たい態度じゃなかったのか。
 そして、消えるかもしれないと分かっているなら――なぜこの時点まで私の行動を止めなかったのか?

「どうして……私と真里とじゃ態度を変えてたのよぉ……。
なんで……今さらになって止めるのよぉ……」

 隼人くんが呆れたような、照れているようなそんな表情で答えた。

(お、お前は……『好きな子にイジワルする』ってキャラを知らんのか?
それに……お前が消えるかもって知ったのはさっきだ)
「え? じゃあ、朝に言った「お前やっぱり……」の意味は?」
(俺はお前の人格が消えるなんて思ってなかったからな。俺はあの時『お前やっぱり俺を振るつもりなのか?』って聞こうと……)

 それだけ言って隼人くんが俯く。
 ちょっと待ってよ……じゃあ、ほとんど全部――私の勘違いなの!?
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