ちぇんじ☆
(じゃあ、ちゃんと俺に『約束』を果たさせろよ……)

 そう言い残して隼人くんが浴室の方に消えて行った。
 それを黙って見送る――。

――ごめんね。

 心の中で嘘をついたことをそっと謝る。
 そして――さよなら、隼人くん。
 心の中でお別れを告げた。

「ねえ、もういいの?」

 先ほどからずっとこちらの様子を窺っていた真里が隼人くんが部屋から消えたのと同時に待ちかねたように話しかけてきた。

「うん、ごめんね。待たせちゃって」
「それは良いけど……アンタ本当に大丈夫なの?」
「うん? 何が?」
「さっき隼人くんが調子悪いって……」
「大丈夫よー、隼人くんの勘違いだから」

 そう言いながらベッドに近付く。
 ベッドの脇に立って真里を見つめる。
 こちらを見つめ返してくる真里――。

「じゃあ――始めようか」

 そう言いながらベッドの上に腰掛けた。
 自分の緊張を抑えるように手を伸ばし……真里の肩に触れる。

――私が消えるための『元に戻る儀式』が幕を開けた。
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