ちぇんじ☆
 だが、翌朝だ。
 俺の『魂』が何者かによって奪われていた。
 俺だって一応霊能力者だ。
 自分が魂だけになっていることはすぐに認識できた。
 慌てて体の中に入ろうとしたのだが――中に『誰か』が入ってしまっていて中に入れない。

 仕方が無いので俺の体の中に入っている誰かが起きるのを待っていた。

 俺の中に入ってしまった『誰か』は起きると同時に案の定パニックに陥っていた。
 そりゃあ、朝起きたら他人の体になっていたのだから誰でも驚くだろう。

 通じるかどうかは分からないがとりあえず話しかけてみる――が、予想通り無反応。

 俺は自分の中の『誰か』が鏡を覗く瞬間を窺った。
 と、いうのも『鏡』というのは霊を映す道具でもあるからだ。
 霊能力を持った俺の体に、霊媒の道具となる鏡を組み合わせれば――いかに鈍そうな俺の中の『誰か』でも俺の存在を認識できるだろう。
 そんな風に考えていた。

 でも、この俺の中にいる人物、想像以上に厄介なヤツだった。
 まず、外出するのに鏡を見ない。
 着替えの時に気が付いたが、わざわざ裸を見ないように目をつぶって着替えたってことは中身は『女の子』だろ?
 もうちょっと外見に気を遣えよ!
 しかもコイツ、人の定期や金を勝手に使う。
 あんまりケチ臭いことは言いたくないが……ちゃんと後で返せよな。と言いたくなる。

――でも……外出した先で――俺が硬直するハメになる。

 俺の中身の人物が自分の『元の体』に会いに行くことは容易に想像できた。
 その会いに行った人物が問題だった。
 俺の中にいる『誰か』が待ち伏せていた人物――それは『佐渡 真里』ちゃんだったのだ。

 その時に俺は初めて気が付いた。

――お、俺の中に入ってるのが……『真里ちゃん』なのか!?
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