ブラウン管の中の彼女~番外編~
「太一…?」
依夜の第一声は気の抜けた声だった。
「っ…!!お前、依夜になにしてんだよ!!」
北野は依夜の頬に触れていて今にも体を捕らえられるくらいの距離にいた。
「何って…キス?」
北野は俺の方を見て妖しく微笑んだ。
「北野くん!!」
「っざけんな!!」
依夜が叫ぶのと俺が北野を殴ろうとしたのはほぼ同時だった。
「大事ならもっと依夜ちゃんの気持ちも考えてあげたら?」
耳元で北野の声が聞こえたと思ったら俺の体は後方に吹っ飛ばされていた。
「太一っ!!」
依夜がすかさず俺の元に駆け寄ってきた。
北野の拳は鳩尾に綺麗に決まった。
こいつ紳士的な顔してるくせにケンカ慣れしてる。
「っ…!!」
痛みでしばらくは動けそうにない。
俺が壁に寄りかかって悶えていると、北野がため息をついた。
「依夜ちゃんももっといい男探そうよ」
「北野くん!!」
「ハイハイ、じゃあ邪魔者は退散します」
北野はひらひらと手を振って会議室から消えていった。
つかめない奴だ。